STD
性感染症(STD : Sexually Transmitted Diseases)
STDとは性行為することにより感染する病気です。最近では、10代から20代の患者さんが急増しています。はっきりとした症状が出現せず、検査をしてみないとわからない場合もあります。症状が進行すると不妊の原因となってしまう病気もあります。気になることがある場合は、婦人科を受診しましょう。
STDの予防としては、コンドームの使用が必要です。最近では、オーラルセックスによって口腔・咽頭内に付着した菌を原因とした感染も問題になっています。
クラミジア感染症

性行為の多様化により感染者数が増えており、世界的に若者の感染者が最も多いSTDです。
近年クラミジアという病原微生物によっておこるクラミジア感染症が急増してきています。特に、産婦人科領域における女性のクラミジア感染症は、自分自身だけでなく、相手の男性にもまた妊娠した場合、早産やまた生まれてくる赤ちゃんなどにも感染し、多彩な疾患を起こす厄介な病気です。
クラミジアの感染は、まず性行為より感染し子宮の入り口である子宮頚管という部位に感染し、子宮頚管炎をおこすことから始まります。子宮頚管炎の症状がないことも多く、症状があっても、帯下感・不正性器出血・腹痛などの非特異的なものだけのことが多いので、見過ごされることが多いです。そして潜在保菌者が性行為をすることで、感染者が急増していると考えられます。
また、日本における子宮頚管からのクラミジアの検出率は、一般女性で5~20%といわれており、広く蔓延していると考えられます。潜伏期間はだいたい1週間から3週間程度です。この子宮頚管炎が起点となり、クラミジアが子宮から骨盤内へ波及したり、男性や赤ちゃんに感染していきます。子宮から骨盤内へ感染が広がっていくと、子宮内膜炎・卵管炎・骨盤腹膜炎などの骨盤内感染症をひきおこしてきます。骨盤内感染症の一般的な症状は下腹痛や発熱ですが、軽症のものから重症のものまでいろいろあり、放置しておいたら、いつの間にか症状もなくなった場合や、入院が必要な場合もあります。
卵管に感染が波及して卵管炎を起こすと、卵管が詰まったり、癒着したりし、不妊症の原因となったり、妊娠しても子宮外妊娠になったりします。さらに、クラミジアが子宮頚管に持続感染している人が妊娠したり、妊娠してからクラミジアに感染した場合、流・早産をおこすことがあります。一方、分娩時の産道感染によって新生児に結膜炎や肺炎をおこすこともあり、その感染率は30~40%で、その内の15~25%に肺炎を起こすことが知られています。クラミジア肺炎の致死率はそんなに高くありませんが、肺炎を反復したり、呼吸機能障害をおこすこともあり、注意が必要です。
男性の場合は尿道分泌物、女性の場合は頚管を綿棒で擦り採取した頚管上皮細胞でクラミジアの有無を直接検査する方法(抗原検査)と、血液検査で調べる方法(抗体検査)があります。抗原検査で陽性の場合は感染性があるため、必ず治療する必要があります。抗体陽性の場合は、過去に感染した場合も陽性となります。

下腹部痛などの症状があれば治療の対象となる場合があります。クラミジア感染症の治療法としては、クラミジアに有効な抗生物質の投与が中心となりますが、現在一般的に良く使われている抗生物質では効果が弱いため、クラミジアに良く効くものを使う必要があります。有効な抗生物質であれば、大体2~4週間の内服で十分な効果が期待できますが、クラミジア感染症は再発・再燃しやすいため、治療後も注意が必要となります。感染により抗体はできますが、繰り返し感染するのでパートナーと一緒に治療する必要があります。
現在クラミジア感染症は急増し、男女を問わず蔓延しつつあります。おかしいなと感じたら、ひどくなる前に早めに産婦人科を受診することをおすすめします。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは外陰部に水疱やびらんができる疾患です。単純ヘルペスウイルス(HSV:Herpes Simplex Virus)1型または2型の感染でおこる感染症です。クラミジアの次に多い感染症です。HSVは繰り返し感染します。初感染の場合、性行為から2~7日くらいの潜伏期の後、外陰部に痛みを伴う水疱が生じます。時に、足の付け根にあるリンパ節が腫れることもあります。
再発性の場合は、過労や月経時などに外陰部に水疱が出現します。再発性の場合は軽症のことが多いです。
治療は抗ウイルス剤の内服か、外用が基本です。症状によっては、炎症止めや抗生剤を投与する場合もあります。
梅毒
梅毒はTreponema pallidum subspecies pallidum菌による感染症です。性行為で感染する場合と、胎児が子宮内にいるときに胎盤を通して感染する場合があります。性行為による感染では、約3週間で小豆大から示指頭大までのしこりができます。男性では、包皮、亀頭部に、女性では、大小陰唇、子宮頚部などに好発します。4,5週間でバラ疹と呼ばれる赤い斑点がでてきます。梅毒は血液検査で診断できます。梅毒の治療法はペニシリンの内服が基本です。症状により、2週間から2ヶ月間程度内服します。
STDは早期治療が肝心です。おかしいなと思ったら婦人科へかかってください。さらにパートナーとの性交渉によるピンポン感染を防ぐためにも二人同時に治療をすることが必要です。