甲状腺ホルモンについて

1甲状腺ホルモンについて

甲状腺ホルモンの主要な構成成分はヨウ素です。甲状腺ホルモンは神経の増殖と成長に必要です。甲状腺のホルモンが多すぎると(甲状腺機能亢進症)、汗をたくさんかいたり、食欲旺盛なのに体重が減る。活発になっているのに疲れやすく、動悸が1日中する。などの症状がでます。
甲状腺のホルモンが少なすぎると(甲状腺機能低下症)、寒気がしたり、皮膚が乾燥したり、食欲がないのにも関わらず体重が増える。体がだるく、無気力となり、いつも眠気を感じるようになる、などの症状がでます。
甲状腺ホルモンは胎盤を通して胎児に移行し、胎児の知能を含めた身体発育に極めて重要な働きをします。軽度の母体甲状腺ホルモン不足があると胎児発育および妊娠経過に悪影響(流産・早産など)を及ぼします。

レディースクリニックかたかみのコラム

潜在性甲状腺機能低下症と習慣性流産

甲状腺ホルモン(FT3、FT4)は正常だが、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高値の状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と言います。潜在性甲状腺機能低下症は女性に多い病気です。

自然妊娠における流産率はおよそ10%〜20%程度とされています。流産の80%ぐらい染色体異常が原因であり、ある種の自然淘汰と考えることができます。しかし、潜在性甲状腺機能低下症の状態で、TSH≧2.5の状態では流産率は30%以上になるという報告があります。つまり、潜在性甲状腺機能低下の状態では自然淘汰で起こり得る流産率をはるかに上回る流産が起こり得るということです。しかし、潜在性甲状腺機能低下の患者に甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充療法を行うことで無事出産できた症例は多数報告されています。
もちろん、潜在性甲状腺機能低下症でこのぐらいの影響が出ますので、顕性甲状腺機能低下症(FT4低値を示し甲状腺機能低下症の症状を呈するもの)ではそれ以上の影響が考えられることは至極当然と言えます。

潜在性甲状腺機能低下症と不妊症、習慣性流産との関係

下垂体ホルモンの一種であるプロラクチン(PRL)は、同じく下垂体ホルモンであるTSH(甲状腺刺激ホルモン)と連動します。潜在性甲状腺機能低下症、橋本病などの甲状腺自体に問題がある甲状腺機能低下症(原発性甲状腺機能低下症)では、甲状腺ホルモン不足→下垂体-甲状腺フィードバック機構によるTRH(TSH放出ホルモン)上昇→TSHとプロラクチン上昇がおこるため、結果としてプロラクチンが上昇(高プロラクチン血症)を引き起こし、プロラクチン自体の排卵抑制作用、着床阻害作用によって不妊症、流産の原因となります。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、子宮内膜NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化するとの論文もあります。NK(ナチュラルキラー)細胞は血液中の癌細胞やウイルス感染細胞を排除するリンパ球で、子宮内膜NK細胞として子宮内膜にも存在しますが、NK(ナチュラルキラー)細胞活性が強過ぎると、胎児を排除する(結果として流産)方向に働きます。
不妊症のスクリーニングにおいて、HSGは卵管疎通性と子宮内腔の形態を確認するための重要な検査です。しかし造影剤にはヨードが含まれているため、子宮卵管造影検査後、血中ヨウ素濃度は上昇し、それにともないTSH値が上昇します。検査後4週で有意に高く12週をピークに下がり始めますが24週でも有意に高く48週間後に検査前と差がなくなります。少なくても検査後、半年間は高濃度ヨードに暴露されるため甲状腺機能に異常が出ることが多いため。潜在性甲状腺機能低下症が疑われる場合には、注意が必要です。甲状腺機能正常の女性がHSGを施行した場合、約15%に潜在性甲状腺機能低下症を認め、また潜在性甲状腺機能低下症の女性では30~40%が顕性甲状腺機能低下症を発症したという報告もあります。つまり潜在性甲状腺機能低下症は、HSGの影響で高率に顕甲状腺機能低下症へ移行する可能性があるということです。明らかな甲状腺機能異常があると不妊となるリスクや流産率が高くなります。
当院では卵管造影検査は「ExEm Foam Kit」超音波卵管造影剤を使用しているためこのような心配はいりません。

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