checolate嚢腫と不妊治療
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5チョコレート嚢腫
卵巣チョコレート嚢腫とは子宮内膜症嚢腫のことで、子宮内膜症患者の2割~5割に見られます。嚢腫の内腔には毎月生理の度に出血が貯まり、どろどろになり、時には固まって、あたかもチョコレートが解けたように見える事でつけられたものです。左卵巣に発生することが多く、両側に発生することもよくあります
卵巣チョコレート嚢腫が不妊治療に与える影響
チョコレート嚢腫による不妊になる原因は本来の子宮内膜症によるものとさらにチョコレート嚢腫自体による問題もあります。
- 卵巣にチョコレート嚢腫があると物理的に新しい卵胞が育つスペースが無くなり卵胞発育の異常をきたします。
- チョコレート嚢腫が邪魔して排卵しにくくなります。黄体化未破裂卵胞:LUF といった排卵障害になります。
- 排卵したとしても、嚢腫サイドに卵管采があれば、卵管采が卵子のキャッチアップできなくなります。
- チョコレート嚢腫が卵子の質を悪くすることもあります。
- 大きさが5〜6cmを超えると癌化の可能性が生じる恐れがある(0.5~1%の確率)
- 嚢腫の破裂の恐れがある(3%程度)ということです
治療法
この全てを考慮して治療法を選択します。挙児希望がなければ、前述の内服薬で抑え込み、定期的に癌化の徴候がないか観察する事になりますが、挙児希望があると違ってきます。内服薬は排卵が止まってしまい、治療中は妊娠ができないからです。
治療はこの10年ぐらいで飛躍的に進歩しました。内服治療薬(ジュナゲスト)が開発され長期にわたり、副作用が少なく子宮内膜症を抑え込むことができるようになりました。
また10年前までは、チョコレートのう胞を見つけるとすぐに腹腔鏡手術で正常卵巣部分を残し、チョコレートのう胞だけを摘出する手術を行うことが当たり前でした。しかし、その手術によって正常卵巣部分も摘出され、残りの卵子数が著しく減少することがわかり、将来の妊娠・出産を考えれば、できる限り卵巣には手をつけない方が良い、という考えに変わってきました。
内膜症性嚢胞は他の卵巣嚢腫とは発生の機序が異なります。卵子は卵巣の外側(皮質)に存在しており、卵巣の内側(実質)には存在しません。内膜症以外の卵巣嚢腫では、卵巣の実質(内側)から嚢腫の基ができますが、内膜症性嚢胞では卵巣の外側から内側に向かって侵入するように形成されます。そのため、内膜症以外の卵巣嚢腫では、皮質がもともと侵されていないため、手術をしても卵巣皮質を温存しやすい訳です。一方で、内膜症性嚢胞では外側(皮質)に接触する場所に内膜症が浸潤するように発生するため、最初から皮質の卵胞が侵されています。したがって、AMHが低下していることも多く、手術を行っても必然的に内膜症に侵された皮質を摘出することになり、さらにAMHが低下すると考えられます。
内膜症があるケースでは、いずれ体外受精を希望しているなら、早い段階でのステップアップを勧めています。チョコレート嚢腫合併のケースでは、その大きさ、悪性の可能性の有無、採卵時のリスク等を考慮した上で、採卵を先行できる場合は体外受精先行を勧めています。チョコレート嚢腫を切除すると少なからず正常卵巣組織も影響を受け、もともと卵巣予備能が低い方ではさらに低下する懸念があります。(手術を先にすると場合によっては卵巣刺激を行っても全く卵が育たなくなるようなケースもあります) 体外受精を予定している患者では、採卵に先行してチョコレート嚢腫の摘出を行ってもその後の体外受精成績には影響しないという報告もあります。むしろ手術による卵巣機能低下している方が影響が大きいとも言われています。
ARTの問題点
ARTを希望される方でチョコレート嚢腫を合併しているケースは少なくありません。卵巣チョコレート嚢腫がある場合のARTは、色々な意味で治療に苦慮する事が多々あります。
例えば、チョコレート嚢腫により卵胞の発育が悪く,卵子の質が低下していることがあります。
採卵の際の問題点として、卵巣が癒着しており採卵しにくいこともあります。また採卵の際にチョコレート嚢腫も同時に穿刺して内容吸引した場合、嚢腫内容が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こす可能性があるからです。